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いまここでどこでもない

I can't give you all that you need ,but I'll give you all I can feel.

スヌーザーが選んだ2009年度ベスト・アルバム10

RAM


2009年という1年は現在にまで続く「北米インディ」というムーブメントの、その最初の臨界点として記憶/記録されるはずだ。新たなるサイケデリアを追求してきた彼らが一旦その歩みを止め、集大成的なサウンドにビーチボーイズビートルズのような極上のポップセンスを結実させたアニマル・コレクティブの大傑作『Merriweather Post Pavilion』がその象徴たる作品だろう。ダーティー・プロジェクターズ『Bitte Orca』も同様にシンボリックな作品だ。男女6人編成によるコーラスワークと奇天烈な曲展開を駆使したストレンジ・ポップスの強烈な印象を支えているのは、リズムの冒険であり音色に対する拘泥であり、つまりは圧倒的な編曲センスだった。(2015年現在、最も彼らの高みに近い地平にいるバンドは世界中でも日本の吉田ヨウヘイgroupだろう。)ニューフェイスの顔ぶれも豪華だ。リアル・エステートザ・ドラムスといったローファイな感覚を経由した新たなギターバンドや、ビーチ・ハウスと並ぶドリーム・ポップの代表格ザ・XXがデビューし、エクスペリメンタルなシーンではセイント・ヴィンセントチューンヤーズといった女性アクトがその存在を主張し始めた。パッション・ピットがダンス・パンクからその起源たるシンセ・ポップへと先祖返りしたようなデビュー作『Manners』を世に放ったのもこの年だ。ベッドルームでも静かな革命が起きた。チルウェイブの誕生だ。ウォッシュト・アウト『Life of Leisure』により発明されたそのスタイルは、あっという間にネオン・インディアントロ・イ・モアといったフォロワーを生み出した。チルウェイブはローンチされたばかりのbandcampというサービスによってインターネットを介し世界中のベッドルームでシェアされカスタマイズされ、やがてインディーR&Bという潮流へと合流することになる。



紙面を飾るマイケルの死、熱烈に愛し合うゲイ・カップル、泣き出しそうな笑顔で踊り狂う女の子達、部屋にスミスのポスターを飾るインディーキッズ。もしこの世界に「Lust For Life」のビデオより美しくて胸を締め付けるものがあるのなら、どうか教えてほしい。虐げられた者達による世界への復讐。それは銀杏Boyzのような形で為されちゃ駄目なんだ。それは花とダンスによって為されるべきなんだ。カルヴィン・トムキンズの「優雅に生きる事が君の最大の報復である」という言葉を忘れてはいけないよ。勝つためではなく、自由であるために。そんな「インディー」の精神性がそのまま具現化したようなイノセントでフラジャイルな存在、それがガールズだった。ビートルズがデビューした1962年が特別であるのと全く同じ意味で、ガールズがデビューした2009年は特別である。そんな暴言を吐きたくなる程に、彼らは特別だった。


さて、インディー文化の清らかさかとは対極にあるゴシップ話を最後にひとつ。MTVの「2009年度最優秀女性アーティストビデオ」という栄冠に輝いたテイラー・スウィフトの受賞スピーチに泥酔したカニエ・ウェストが乱入してスピーチを妨害し賞を台無しにしてしまう。メディアや世間からの大バッシングはもちろん、一国の大統領にまで「Jackass」と罵られてしまった彼はしばらく表舞台から退くことになる。あはは、くっだらねえ。しかしポップ・ミュージックというカルチャーは本当に面白い。だって、もしこの醜悪な出来事がなければ、2010年代というディケイドは全く違うものになったかもしれないんだから。


スヌーザーが選んだ2009年度ベストアルバム10

10.Kasabian『West Ryder Pauper Lunatic Asylum』


9.Hudson Mohawke『Butter』

Butter

Butter


8.Dirty Projectors『Bitte Orca


7.The Horrors/Primary Colours


6.Lily Allen『It's Not Me, It's You』


5.Animal Collective『Merriweather Post Pavilion』


4.Franz Ferdinand『Tonight』


3.Passion Pit『Manners』

Manners

Manners


2.Tyondai Braxton『Central Market』


1.Girls『Album』

ALBUM

ALBUM

Youtube


スヌーザーが選んだ2009年度ベストシングル10

Apple Music Playlist

1.Animal Collective「Summertime Clothes」

2.Mika「We Are Golden」

3.Burial+Four Tet「Moth/Wolf Club」

4.Girls「Hellhole Ratrace」

5.Dezzee Rascal「Bonkers」

6.くるりとユーミン「シャツを洗えば」

7.No Age「You're A Target」

8.The Horrors「Sea Within A Sea」

9.Delphic「Counterpoint」

10.Jack Penate「Tonight's Today」