いまここでどこでもない

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ROTH BART BARONと「ロキノン系」を巡る話(前編)

耳の早いリスナーの間では既に大きな話題となっていたROTH BART BARONのニューアルバム「ロットバルトバロンの氷河期」を遅ればせながらようやく聴きました。

ロットバルトバロンの氷河期/ROTH BART BARON 2014

素晴らしい。

思索に富みながらも観念的になりすぎない歌詞や三船雅也の美しいハイトーンボイスはもちろんのこと、なによりサウンドが近年の日本のバンドとして破格に素晴らしく思います。

多くの方が指摘していますが、fleet foxesのような壮大なサウンドスケープやbon iverを思わせる室内楽的なアレンジに現在のアメリカのシーンからの確かな影響を感じさせます。それが決して猿真似にはならず日本のバンドならではの情緒も持ち合わせています。

さて、この素晴らしいアルバムのレビューはインターネット上にたくさんあるので今回は少し違った視点から彼らを語りたいと思います。

ロキノン系」という言葉があります。まず前提として僕自身の「ロキノン系」にいう言葉に対する印象を明らかにすると、個人的には例外はあれど「退屈なバンド群」というネガティブな意味合いで使われてる/使う言葉と捉えています。

ロキノン系」とは一体なんなのか?


その名の通り雑誌ロッキング・オン・ジャパンに載っているようなバンドという意味なら分かりやすいのですが、掲載されるアーティストは多岐にわたります。例えばイレギュラーとはいえ表紙を飾ったこともあるGLAY浜崎あゆみ、最近掲載された(!)ゴールデンボンバーロキノン系と呼ぶ人はまずいないでしょう。ミスターチルドレンサザンオールスターズといった大御所バンドもよく載っていますが、同じくロキノン系とは滅多に呼ばれません。またロキノン系が好き!と自称するリスナーのメンタリティとして排他的な傾向がみられます。ロキノン系のバンドの地上波登場時にtwitterでよく見受けられる「非ロキノン系ミュージシャン(=共演者)dis」などがその際たるものでしょう。

「レジーのブログ」の記事(http://regista13.blog.fc2.com/blog-entry-9.html)に興味深い発言があったので引用します。


ジー「で、考えたんですけど、たぶんこの「ロキノン系」って言葉は「好きな音楽ジャンル」を指すというよりも「自分の音楽に対するアティテュード」を示しているものなんじゃないかなと思うんですよね」

司会者「つまり「どんな態度で音楽を聴いているか」ってことでしょうか」

ジー「そう。「私は自分の耳で良いと思った音楽を選んでる!」とか「俺はアイドルと韓流に汚染されたヒットチャートに興味はない!」とか、そんなメッセージがこめられてるというか。で、そうすると「ロキノン系」が指し示す範囲も「商業化されすぎてないちょっといけてるバンド群」ってことでなんとなく線引きができる。たぶんこの場合ミスチルは入らないでしょうね」


なるほど、ロキノン系はジャンルではなく「「意識の高い」リスナーが好んで聞きがちなアーティスト群(ただしメジャーすぎたらダメ)である」という定義です。確かにだいぶしっくりときます。

しかし例えばこのROTH BART BARONはロキノン系とカテゴライズされ(うる)のでしょうか?僕はNOだと思いますし、多くの方もそう感じると思います。彼らは意識の高いリスナーに好まれるだろうし、もちろんメジャーではないのに、なぜでしょうか?同じことはカクバリズム周辺の所謂東京インディーシーンのアーティストにも言えると思います。やはりロキノン系というのはリスナーのアティテュードだけで括れるものではなさそうです。

そこで僕が考えたロキノン系の定義は以下のようなものです。

oasis,NIRVANAといった90年台前半の欧米のギターロックの影響が色濃く、ヴァース/コーラス/ヴァースといった強弱法を多用しておりライブでの即効性が強い。リズム面での黒人音楽の影響は少なくBPMが早い曲が多い。またアーティストとリスナー間に共依存的な関係性がよくみられる」

サウンドのことは専門的な知識が乏しいため表現があっているか分かりませんが、要は「同時代(2000年以降)の洋楽の影響をあまり感じさせないガラパゴス的な進化を遂げたわかりやすい(ギター)ロックバンド」ということです。零れ落ちるものもたくさんありそうですが。

しかしロキノン系の肝は最後のセンテンス、リスナーとアーティストの間の共依存的な関係性、ではないかと僕は考えています。その関係性こそがロキノン系特有の選民意識やムラ社会を生み出している元凶である、と。


続きは後編で、なるべく早く更新します。