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いまここでどこでもない

I can't give you all that you need ,but I'll give you all I can feel.

richard natto,久保田麻琴

ラジオから流れてきた名も顔も知らないミュージシャンの曲に心を奪われてしまう。そんな素敵な出来事が今日も世界のあちこちで起きているのだろう。


たまたま入ったハワイ料理のレストランのラジオから聞こえときた音楽に僕は一瞬で恋に落ちた。少年のような繊細さをもつ魅力的な声。爪弾かれるギターは蒼く透き通っていてなんの邪気も感じさせない。いったい誰だ?店員に聞いてみても勿論分からない。


そこからrichard nattoというハワイのシンガーソングライターを発見するまでに1年かかった。richard nattoはハワイのTOMA/NATTOというバンドのフロントマンとして活躍し、バンド解散を機にソロアーティストとしての活動を開始し数枚のアルバムを残している。ハワイアンミュージックの世界では名が知れているらしく、一部のアルバムは日本盤としても発売している。中でも1980年に発表されたこのソロ一作目が飛び抜けて素晴らしい。

not just another pretty face/richard natto 1980

Not Just Another Pretty Face (ノット・ジャスト・アナザー・プリティ・フェイス)

Not Just Another Pretty Face (ノット・ジャスト・アナザー・プリティ・フェイス)

ライナーノーツでben wattのnorth marine driveを引き合いに出したのも頷けるとてもフラジャイルな音楽。しかしelvis presleyを学園祭でカバーしたかのようなM4,8,9の微笑ましさといい、このアルバムにはくすぐったくなる若いエネルギーと楽観的なフィーリングが溢れている。


拙いロックンロールも楽しいが、メロウな冒頭3曲とバカラック「house is not a home」をカバーした最終曲にみられる心地よいセンチメントがこのアルバムの通低音だ。僕がレストランで聞いたのはこの曲だった。まるで「she's out of my life」を歌う時のマイケルジャクソンのよう。



朝、目が覚めると部屋には誰もいない。心細くて寂しいけれど耳をすませばドアの向こうからテレビの音と朝食の匂いがする。扉を開けたらきっと僕は快く迎え入れられるだろう。だから今はあと少しだけこの孤独を楽しんでいたい───


そんな恥ずかしいポエムを書きたくなるほどにこのアルバムは素晴らしいです。ぜひ夏のお供に。



ハワイアンミュージックといえば、夕焼け楽団やBlue Asiaシリーズでもお馴染みの久保田麻琴の諸作も素晴らしい。

KAUAI march-5/久保田麻琴 2005

KAUAI March-05

KAUAI March-05

ハワイのカウアイ島でフィールドレコーディングされた本作。波の音や木々の音はもちろんのことハワイの教会での賛美歌やチャーントも収録されている。旅の記録をまとめたライナーノーツやブックレットもまるでハワイからの手紙のよう。


窓を全開にしてこの音楽を鳴らせば、そこは観光地化される以前の楽園のハワイだ。本物のボヘミアンである久保田麻琴がなぜハワイに惹かれるのかがよく分かるアルバムとなっている。