今日も生きたね/THE NOVEMVERS
昨年からTHE NOVEMBERSの名前はネット上で頻繁に見かけていた。
だがどうも腰が重くて結局1度もアクセスすることの無いまま今に至ってしまい、メジャー流通したこのシングルをようやく手に取った次第だ。
何となく激しくてエモいバンドなんだろうな、という謎の先入観/偏見があったので「今日も生きたね」を聴いた時は少し拍子抜けしてしまった。やっぱりイメージでミュージシャンを判断しちゃダメだね。取り立てて派手なサビやギターソロを持たずに淡々と進んでゆくこの長尺曲は、しかし、だからこそ品があり本当に美しい名曲だ。
「こんな世界でも、美しい事はある。僕がそれを見出せる限りは」という一節はフロントマンの小林祐介がこの曲に寄せて書いた文章の一部であり、その理念は見事に楽曲に落とし込まれている。
正直に告白すれば、僕はこの曲の前半部分で歌われる観念的な感傷や諦念にはあまり興味が無いし少しばかり蛇足に感じてしまう。素晴らしいサウンドとメロディは、世界の儚い美しさも、目を逸らそうとも視界にちらつく醜さも取りこぼしなく表現している。こんな世界「でも」という反転は音だけで十二分に達成されているから、言葉はもうあんまりいいんじゃないかな。5:03以降の崇高な美しさと甘美な憂鬱に包まれる度にその思いは増してゆく。
もう既に存在しているのかもしれないけれど、僕はTHE NOVEMVERSのラブソングが聴きたくてたまらない。対比とか反転とか、もうめんどくさい小細工なしの、とびっきり美しくて、とびっきり甘いラブソングを。だってそれはどうせきっと煙草のように苦くて、きっと最高のラブソングに違いないから。