いまここでどこでもない

I can't give you all that you need ,but I'll give you all I can feel.

Fatima,篠原ともえ

ロンドンを本拠地に置くEglo recordsというレーベルをご存知だろうか?

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レーベルの主催者の1人はサム・シェパードという人物。この名前にピンとくる人は少ないかもしれないが、Floating pointsの中の人といえばテクノリスナーなら聞き覚えがあるだろう。

Floating pointsの楽曲はダブステップにジャズやソウルの要素を取り入れた極めてモダンでインテリジェントなビートミュージックだ。彼の音楽は雄弁とは対極にある。何も語らず、何も伝えない。ただクールでさえあればいい、という佇まいはかつてのBasic channelの美学に通じるものがある。そしてそのスタンスはレーベル全体にも言えることだろう。


Eglo recordsにはFloating pointsやAlexander NutやMizz beatsといったビートメーカーに並んである1人のフィメールソウルシンガーが所属している。フィンランド出身のFatimaだ。先日、彼女が待望のデビューアルバムをリリースした。

Yellow memories/Fatima 2014

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ソロ名義だが曲のタイトルのクレジットみれば分かるように、このアルバムはEgloのビートメーカー達がFatimaをいかにプロデュースするか?を楽しむアルバムであり、そういう意味ではレーベルコンピレーションとしての一面もあるレコードとなっている。


こういったコンセプトを聞いて篠原ともえのファーストアルバムを思い出した人もいるかもしれない。

スーパー・モデル/篠原ともえ 1996
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石野卓球を筆頭に、まりん、近田春夫中原昌也CMJK、といった石野卓球の愉快な仲間たちが当時売り出し中だった篠原ともえという不思議ちゃんシンガーをプロデュース、というか遊びまくったこのアルバム。大抵どのブックオフでも100円以下で買えるので是非聞いてみてほしい、マジ名盤だから。


さて話題をFatimaのアルバムに戻そう。篠原ともえのアルバムに比べると、可笑しくなるくらい皆が大真面目にプロデュースしていてトラックのクオリティは総じて高い。FatimaのボーカルはクラシックでオーソドックスなR&Bスタイルでありトラックの多彩さと比較してしまうと流石に少しレンジが狭いかなと感じなくもないが、何よりいい声だ。

やはりというかFloating pointsプロデュースの曲が飛び抜けて素晴らしい。ストリングス隊やビッグバンドを率いたFloating points ensemble名義での活動で培っただろうホーンアレンジが冴えまくる冒頭の「Do Better」が個人的ベストトラック。