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いまここでどこでもない

I can't give you all that you need ,but I'll give you all I can feel.

Undersky Ambience

レビュー 音楽

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Streaming

以前にもポストした国産エレクトロニカの最高峰、sora。まるでオウテカサンプラーを用いてリゾートミュージックを制作したかのような『re:sort』という傑作を1枚だけ残して活動休止(?)して以来、何の音沙汰も無いので彼の新しい音源を聴くことはすっかり諦めていたのですが、ここにきて当時の京都メトロでのライブ音源がTwitterで拡散されてきました。当然『re:sort』の楽曲を中心としたセットリストですが、初めて聴く曲もあり思わず感涙。透明でキラキラした音たちがスコールのように降り注ぐ後半の展開が特に気持ちよくて本当に素晴らしいです。お願い、どれだけ時間がかかってもいいから新しいアルバムを出してください。同じく音信不通のcheekboneも。せめて未発表音源集でいいから、ずっと待ってる。


ところで、キラキラしたアンビエントサウンドが好きならこの歴史的名盤を聴き逃すわけにはいきません。90年代のR&Sを代表するドイツのテクノユニットSun electricのライブ盤。

30.7.94 live/Sun electric 1995

コペンハーゲンの公園で録音された音源は野外ならではの開放感と、底抜けにハッピーで楽天的なヴァイブに満ちています。アルバムは終始ビートレスで、キラキラした電子音と夏のアイスクリームのようにトロトロに溶けたビートルズブルックナーのサンプリングが絡み合いリスナーに心地良い陶酔感を与えてくれます。しかしその陶酔はドラッギーでぶっ飛んだものではなく、昼間の公園でビールを飲んで酔っ払うといったような小市民的なエスケーピズムに近いように思います。そういった意味でこのアルバムのどこか俗っぽい快楽はチルウェイヴの快楽と通ずるものがあるかもしれません。晴れた休日に窓を開けて大音量でリピートしてみてください。きっと何にも手がつかなくなって、一日を台無しにしてくれることでしょう。

余談ですが、ビートルズのサンプリングが原因なのかこのアルバムは長らく廃盤になっており現在に至るまで再発されていません。なのでCDであれレコードであれフィジカルなメディアでは割と高価なアイテムです。便利な時代になったものでiTunesでは500円(⁈)でフルレングスが購入できますが、なるべくならブルックナーのサンプリングについて考察した杉田元一さんの素晴らしいライナーノーツが読める国内盤をオススメします。中古屋で是非、意外とブックオフにもあります。ちなみにLPは収録曲が少ないのでかなりコアなコレクター以外は手を出さない方が賢明でしょう。僕は頭おかしいので買いました。1stアルバム『kitchen』もピュアテクノの名盤なんで、そちらも探してみて損はないと思います。


ついでに90年代アンビエントの愛聴盤をもうふたつ。まずは田中フミヤが主催するとれまレコードに所属したタンツムジークが別名義で発表したこの作品。

Scratches/ Akio / Okihide 1995
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単にジャケット写真の印象に引っ張られているだけかもしれませんが、聞くたびに自分が小学生の頃を思い出します。朝の通学路の匂い、誰もいない教室と体育館、放課後の割れたチャイムの音。そんな叙情的でノスタルジックなアンビエンスを見事にコンパイルした名盤です。かなり入手困難なのが残念、再発しないかなー、しないだろうなー。全曲いいですが、中でも2曲目の「Blue」が白眉。デリック・メイの傑作群のような凛とした美しさと深い精神性が宿ったクラシックとなっています。

続いてF communicationsからリリースされた美しいジャケットに目を奪われるフレンチ・アンビエント。Jay Alanskyという音楽プロデューサーのソロプロジェクトとしてリリースされた作品です。

Mercy street/A Reminiscent Drive 1997
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ベタなフランス映画を思わせるアンニュイな空気と耽美的なメランコリアが充満したアルバムです。冒頭と終幕にリフレインされる「Life is beautiful」は雨の匂いのするダウンテンポの名曲。しっかりしたビートを持った楽曲も収録されているので、厳密にはアンビエント作品とは呼べないかもしれませんが、この作品ほど人を自閉させ思索や感傷に耽らせる音楽もそうはありません。宅録で丁寧にレイヤー状に配置されたシンセやストリングスは、小沢健二が言うところの「1つの時間の中にあって幾億も重なる昼と夜」という言葉のように、この世界では様々なライフがスピードも向きも違うけれど歩みを共にしていることを思わせます。ダビーな空間にピアノが降り注ぐ7曲目の「Like Twins」が個人的なベストトラック。喜びと悲しみは双子のように存在し、だからこそ人生は美しい。

美麗なジャケットもさることながら、インナースリーブのコラージュ・アートも素晴らしい。CDに隠れたこのセンテンスを発見したときに思わず息を呑み、それからずっと心に残って離れない。火傷のように。

Why worry when you can pray.


最後に。この記事のタイトルは僕がアンビエントミュージックに夢中になるきっかけとなった個人ホームページのタイトルをそのまま引用させて頂きました。現在は更新されていませんが、アーカイブが残っているので是非ご覧になってみてください。きっと豊かな出会いがあると思います。