お知らせ、7月のベストミュージック(後編)
ではでは7月のベストアルバムを!順不同で10枚。いや、でも正直最初の2枚は飛び抜けてとんでもなかった。勿論どれも本当に本当に素晴らしい作品ばっかりです。8月にはとりあえずFKA twigsとSpoonの新譜もあるし、アナウンスされていたKanye Westの新曲「All Day」もじきに発表されるはず。Yeaaaaah!!
あーもう、どれもこれも楽しみすぎて幸せ。死ぬまでドキドキしたいわ。そう歌ったYUKIちゃんはいつだって正しい。
恋する団地/ayU tokiO
度肝を抜かれるとはこのことか。先月のスカート『サイダーの庭』を凌駕する激プログレッシブなシティ・ポップ。その複雑さは同じく今年リリースされたLampの傑作『ゆめ』を引き合いに出せるほどに、豊かで美しい。それでいて浮世離れしているわけでもなく「シティ」としてのリアリティをもってこちらに迫ってくるのだから堪らない。このアルバムを聴きながら街を歩くと全てが煌めいてみえる。ビルも街路樹も電波塔も。もう魔法がかかっているとしか思えない。収録された5曲のどれもが超のつく名曲の大傑作EP!ミツメが『ささやき』のジャケットで(おそらく)行き詰まりの象徴として使用した「団地」を「恋する団地」とひっくり返し、「21世紀の世界はこんなにも素敵さ」なんてことを信じさせてしまう説得力と強度も兼ね揃えている。まいった。
Lese Majesty/Shabazz Palaces
[asin:B00KHOV1UW:detail]
ヒップホップに耳をアップデートされるような衝撃を僕は今まで3回体験した。1度目はブルーハーブの『Sell Our Soul』を聴いた時。2度目はKanye Westの『My Beautiful Dark Twisted Fantasy』を聴いた時。そして3度目がこのShabazz Palacesの『Lese Majesty』を聴いた時だ。まだ自分の中でうまく言語化できていないのだけど「DOPE」という感覚を初めて身を以て理解させられた、体験したことの無い強烈なトリップ感。陶酔でも多幸感でも全能感でもなく、ぽっかりと口を開けた亜空間に落とされたようなサード・インパクト。世界の「向こう側」で鳴っている音楽。
Iceberg Nerves/Lowlakes
[asin:B00M9M5F7K:detail]
就寝時によく聴いている。強くノスタルジーを想起させるサウンドスケープは初期Boards of Canadaに比類する蠱惑的な魅力をもっている。アルバムの幕が閉じた瞬間の心地よい疲労感と残り香が夢の世界へと僕を誘う。なのでボーナストラックのリミックスは消してOK!
Sketches From an Island/Mark Barrott
少し前に離島に遊びに行ったとき、このアルバムを流しながらのハンモックでうたた寝してみた。アーシーなサウンドとビーチの音との親和性は怖いぐらいバッチリで、それはそれは最高の時間を過ごしました。あの時、確かに夏は時間を止めて、世界は静止した。
Drop /D.K.
フランスのAntinoteに所属するD.K.のファーストアルバム。アトモスフェリックでコズミックなディープハウスに、デトロイトテクノの荒涼とした美しさとVaporwaveのエセ近未来的な感覚をスパイスとして加えた好盤。真夜中にヘッドホンで聴くと尚良し。深く深く潜る際のBGMとして。
Swords Cry EP/Knight One
強い印象を残すジャケットに惹かれて聴いてみたら大当たり。スイスのエレクトリック・アーティストのデビューEP。懐かしいような新しいような不思議な空気と重力を纏ったストレンジ・ポップス。空虚さを感じさせるほどに心地よい「Hollw」がベストトラック。ビーチで聴いてドロドロっと溶けそうになった。
T-Minus Grand Gesture EP/Brave Bird
アメリカはミシガンのパンクバンドの二枚目のEP。Modern Baseballも最高だったけど、彼らに勝るとも劣らないソングライティング力の高さに脱帽。決して勢い一辺倒なパンクサウンドでもなく、テンポを落とした燻し銀なドライブ感も持ち合わせている。それでいて瑞々しいエモさは少しも失われず、思わず泣いてしまう感じはあの麗しきAmerican Footballに通じるかもしれない。男の子はきっと大好きでしょう。2曲目の「Rekindle」を聴いてみてくれ。
Morning Shore/Geotic
BathsのアンビエントラインGeoticがリリースしたサマーブリージンな傑作。最近のダークでゴシックなBathsも好きだけど『Cerulean』の頃のユーフォリックな音像がもっと好き、という僕のようなリスナーには堪らない作品でした。Aphex Twinの天使サイドのようなオープニングトラックが2014年最高の夏の扉。
Zebra EP/Gallant
ロサンゼルス初のインディR&B。こういったクィアな音楽はちょっと食傷気味だったけれど、これは余裕で聴けた。悪夢にも似た甘美さ。幽霊が歌うラブソング。怪談みたいに冷ややかな質感は夏の夜にぴったり。暗い部屋で独りで聴こう。
Where Will We Go EP/Nick Hakim
サイン・マガジンもとい田中宗一郎から熱烈なラブコールを受けているNick HakimもファーストEP。鳴っている音ひとつひとつの重厚な存在感が鮮烈。耽美的でクールなインディR&Bとも知的でナードなVaporwaveとも違う最新型のベッドルーム・ミュージック。パーソナルなシンガーソングライター的表現の最突端として、この作品の衝撃は世界中の孤独な寝室を通じ静かに広がってゆくはずだ。