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いまここでどこでもない

I can't give you all that you need ,but I'll give you all I can feel.

SEEKAE『WORRY』

レビュー

薄々勘付いているだろうが、ポップ・ミュージック好きの連中の「最高!」だとか「歴史的名盤!」みたいな言葉ほど信用できない言葉、そうそうない。彼らは年中そんなことを声高に叫んでは、翌週にはけろっとデータを消去し違うアーティストの最新作に尻軽に熱狂しているなんてザラにある。もちろんそれは悪いことじゃないし、吐いた言葉は嘘でもきっと無い。ミーハーに流行を追っかけて、キャーキャーワーワー言ってるのが好きな人種というだけだ。僕含め。


それでも、どうかこれだけは信じてほしい。オーストラリア出身のトリオ編成バンド、SEEKAEのこのサードアルバムはとんでもなく最高だし、間違いなく歴史的名盤だ。嘘じゃない。この作品をリリースしたのがシドニーに「FUTURE CLASSIC」なんて粋な名前のレーベルで、しかもわざわざレーベル100作目にこの作品をナンバリングしたのも偶然なんかじゃ決してない。多分、きっとね。

THE WORRY/SEEKAE(2014)
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このアルバムはダブステップやインダストリアルなどの最新型のクールなビートと、ベースミュージックの深く内面へと潜ってゆくダークな精神性を兼ね備え、加えてトリップポップ的な陶酔感とEDMにも通じるチャラい大衆性までも同時に持ち合わせている。Lust For Youthの『International』が陽だとすると、このSEEKAEの『THE WORRY』は影だ。夜の不穏な不気味さと夜遊び前の汚れた高揚感。そう、歴史は夜作られる


ネット上で正式に聴ける音源だけでもその素晴らしさを断片的に味わえるはずだ。まずは、アルバムの冒頭二曲目を飾る「Another」を聴いてみてほしい。

リヴァーブを効かせた激エモーショナルなボーカルと月夜のようなクールネスを持った冷たいビート。バックでは神聖さを感じさせるシンセサウンドが絶え間無く響いている。ひとしきりビートが乱れ打たれた後は神聖さが全面に出され、甘やかに昇ってゆくのかと思いきや曲はぶつ切りに終わる。


続いて4曲目「Test & Recognize」

EDM経由のチキチキしたビートにヒプノティックなシンセから始まり、ヒステリックで不気味なビートと、更にリヴァーブを深めた呪文のようなボーカルが反復される後半までゴシックな美意識が貫かれている。極めてかっこいい。150万回近く再生されているFlumeのリミックスも最高だ。


続いて「Monster」

ミドルテンポでアルバム内では比較的大人しめのナンバー。ボーカルも生に近くバンドサウンドらしい仕上がりになっているが、背後で鳴り続ける不気味なリズムと憂鬱なメロディーが不安を静かに掻き立ててくる。どことなく『Amnesiac』の頃のRadioheadを連想させるサウンドだ。この曲以外にも同じくバンドらしい「Boys」や「Further」などもRadioheadからの影響を感じさせる。


これらネット上の音源以外にも、アルバムにはキラーチューンが満載だ。特にタイトルトラック「WORRY」の凡百のEDMを蹴散らす圧倒的な高揚感は聴き逃すにはあまりに惜しい。他にも硬質なビートが痺れる「The Stars Below」、まるでニューオーダーのようにポップ・オリエンティッドな「Still Moving」「Oxen Calm」からラスト「Tais」の残り香まで、聞きどころを挙げればキリがない程に充実した内容となっている。


改めて繰り返すが、SEEKAEの三枚目のアルバム『THE WORRY』は最新のビートと豊かに培われたミュージック・ボキャブラリーを駆使した極めてモダンなポップミュージック集だ。真夜中のストリートのような危険な香りも、クラブのむせ返るような熱気と煌びやかさも、月夜のベッドルームの美しい静寂も、全てがここにある。間違いない。未来のクラシック。

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