9月のベストミュージック
秋も深まってまいりました。すっかりスチャダラパーの名曲「Mr.オータム」が染みる季節になってしまいましたね。きっと秋が来るたびにこの曲を聴いて、色々思うことも増えていくのでしょう。年々と。ちょっと嫌になっちゃう。
例年のごとく街を疾走
KEEP ON AND ON
気温は下がる傾向
肌の露出度減る一方一方
例年のごとくオレはしっぽり
KEEP ON 基本的に好きね相当
感じる事は増える一方
(Mr.オータム/スチャダラパー)
泣いても笑っても何もしなくても、今年もいよいよ残すところあと3ヶ月。マジかよ。今年リリースされた作品でPitchforkが9点台を付けたのはSwansとSun Kil Moonの2枚だけ。Pitchforkがなんぼのもんじゃい!とも思いますが、実感として大豊作だった去年に比べると、少々小粒感は否めないかも。なんてことを思っていたらここにきて怒涛の傑作ラッシュ。9月はマジ傑作揃いでした。やっぱりポップミュージックは最高に面白い。新しく手にした音源を再生して音が流れてくる瞬間のドキドキ感。それに勝る興奮なんてそうそうない。When I Met You。死ぬまでワクワクしたいわ。
ドキドキワクワクといえば、10月に2014年の年間ベストアルバム最右翼であるデビューアルバムをリリース予定のArca。先行曲「Thievery」の激ヤバミュージックビデオがアップされました。
「Thievery」について、Twitter上でダンスホール・レゲエへの接近を指摘した感想に膝を打ちましたが、本人も意識的だったんですね。キモかっこいい極致の映像です。とくにケツの肉感。悪夢のようだ。さて、そんなArcaさんですがアルバムリリースに次いで大ニュースが飛び込んでまいりました。なんと来たるBjorkのアルバムをプロデュースするそうです。しかもArca本人はプロデュースというよりも共作のつもりのようで、こんな激アツTweetをかましてくれました。
https://twitter.com/arca1000000/status/517035323818123264
とにかくアルバムもBjorkとの共作も死ぬほど楽しみ。生きなければ。個人的に「日本のArca」といえばSeihoさん、「日本のBjork」といえばYUKIさんって感じで、だったら「ArcaがBjorkをプロデュースするのってSeihoがYUKIをプロデュースする感じでしょうか」と呟いたら、これまたSeihoさんから涙が出るほどかっこいいお返事を頂きました。ありがとうございます。
ちょっと違う。僕がBjorkのアルバムをプロデュースするの感じだと思ってる。日本の音楽が世界の音楽の縮小版なんて考え方は古いし、そんなとこで音楽作ってるつもりはないです。
— Seiho (@seiho777) 2014年10月1日
これ、かっこよすぎません?更にファンになってしまいました。Seihoさんは日本のArcaを目指しているわけじゃないし、YUKIさんも日本のBjorkを目指しているわけじゃ(きっと)ない。日本の○○なんかを目指すとかじゃなくて、世界とまったく同じ地平で音楽を作っている。当たり前。気付かされて恥ずかしいやら嬉しいやら。
では、9月に出会った素晴らしい音楽を。いつも以上にベタなセレクトですが、よかったら無理をしてでも聴いてみてくださいね。
THE PIER/くるり
すぎやまこういちときゃりーぱみゅぱみゅがタッグを組んだようなオープニングトラックから『NIKKI』期のようなブリティッシュ・ロックへの情景が滲む最終曲まで、古今東西あらゆる音楽に立ち寄っては出会いと別れを繰り返してゆく。再会の約束はどれも果たされることなく忘れ去られ、裏切られてゆく。「桟橋」と名付けられたこのアルバムは守られることない約束についての作品だ。約束は果たされることではなく交わされることそれ自体に価値があり、その尊さはある。生きなければ。もう会えなくとも。
Syro/Aphex Twin
「Aphex Twinっぽい」って形容されがちなこの作品。意外だった。理由は考えてみれば当然で、彼の作品の個人的なフェイバリットは『Selected Ambient Works Vol.2』であり、Aphex Twin=アンビエントの人と誤解と知りながらも刷り込まれていたからだ。だから僕はこのアルバムの人懐っこいメロディも、多用されるボイス・サンプリングも、プライベートに宛てられた手紙のような親密さも、どれもが新鮮に映った。はじめまして!リチャード。素晴らしいアルバムをどうもありがとう。
→minipops 67 120.2 (source field mix)
Mr Twin Sister/Mr Twin Sister
秋の夜長をこれほどロマンチックに仕立て上げてくれるアルバムもないだろう。スウィートかつメロウでありながらシルキーなだけではなく、元ドリームポップバンドらしいアプローチが音に陰影と深みを与えている。黒くないブラック・ミュージック、蒼くてスムースなソウル・ミュージック。
A New Testament/Christopher Owens
Girlsのフロントマンによる二枚目のソロアルバム。相変わらずフラジャイルだけれど、緊張感のない甘すぎるカントリー調の楽曲。加えてこのクソださいジャケットと「新約聖書」というズッコケタイトル。そのあまりの澱みの無さに戸惑ってしまう。無防備で無邪気なクリストファーに小さな違和感と大きな感動を覚える。まるで『100s』をリリースした頃の中村一義に感じた時のように。
Benjamin Booker/Benjamin Booker
僅か6日間でレコーディングされたこのアルバムの中の一曲で、彼は「未来はいつだってゆっくりやってくる」なんてキラーフレーズを甘いメロディに乗せて苛立ちながら歌う。こちらから無理やり未来へとにじり寄るかのように。伝統的なブルースとロックンロールが土台でありながら、決して懐古主義的に陥らないクールでミニマルなサウンドはモダンと呼ぶに何ら差し支えない。ストーリテラーとしての才覚も感じさせるリリックも素晴らしい。プリミティブでリアルな若者の衝動をそのまま刻み込んだ、屈指のロックンロールアルバムにしてStrokesやArctic Monkeysのファーストに比類するデビューアルバム。驚いた。未来はいつだっていきなりやってくる。キャッチーな冒頭「Violent Shiver」も悪くないが、それ以外のアルバム曲の方が億兆倍素晴らしい。
きゅるきゅる/大森靖子
全曲ばっちり。文句なし。すごいスピードで駆け抜けちゃって。外野のくだらない野次やインテリのいちゃもんなんて気にするな。そして、どうか第二の椎名林檎みたいにだけはならないで。頭がよすぎて、こんがらがった君が好きだよ。
Valley Girl/Madalyn Merkey
https://itunes.apple.com/jp/album/valley-girl/id912628067?uo=4&at=10l8JW&ct=hatenablog
黒より深い青。海の底から満点の星空を見上げたような、沈み込むと同時に浮かび上がる不思議な感覚。静かでありながら豊かな物語の存在を匂わせ、微かなボーカルに強烈な記銘性を感じさせる、アンビエントミュージックの手法で作り上げられたSSW作品。
DARK WEB/Giant Claw RECOMMEND!!
Ontario Gothic/Foxes in Fiction
Girls Come First/Eef Barzelay
Monochrome/KOHH
なんやかんやでこのアルバムばっかり聴いてた。僕らの『Illmatic』。
ベストソングはダントツでこの曲!「いつまでも/私のそばで/その涙を見せてよ」という小さな祈りに心が大きく震える。
白い光の朝に/平賀さち枝とホームカミングス