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いまここでどこでもない

I can't give you all that you need ,but I'll give you all I can feel.

Giant Claw『Dark Web』

レビュー

食品まつりの作品などのリリースで知られるレーベル「Orange Milk」の主催者、Keith Rankin a.k.a Giant Clawの『Dark Web』がとんでもない!


FKA twigsの『LP1』が良い意味でも悪い意味でも「置きにいった」ウェルメイドなR&Bアルバムであったのに対し、Giant Clawの『Dark Web』はクレイジーでグロテスクかつスムースという奇妙で奇怪な「外しにきた」R&Bが展開されている。

Oneohtrix Point Neverの昨年の大傑作『R Plus Seven』の何がいちばん素晴らしいかって、それは「畏れ」の感覚だと個人的には思っている。敬虔な恐怖。神聖さと不気味さ。決して宗教的な作品では無いが、あのアルバムに通底する「何か得体の知れないもの」に対する慄きと下世話な好奇心にすっかり僕はやられてしまった。

その「畏れ」の感覚は『Dark Web』でも味わうことができた。ドロっとエログロ風味だったOPNに比較すると、Giant Clawの「畏れ」はR&Bのコラージュによって表現され非常に洗練されているように感じる。

インターネット・エクスペリメンタル・ミュージックを特徴付けてきた、ヒップホップもテクノもノイズも何でもありのカオティックなごちゃまぜ感が超スピードでブラッシュアップされる過程にOPNの『R Plus Seven』があったとするなら、いや「あったのだ」と言い直さざるを得ないほど強烈に『Dark Web』は未来の音楽だ。インターネットで実った果実は破裂してあちこちに種をばら撒き、そのひとつはR&Bという土壌に落ちてその芽を出した。フューチャリスティックではなくフューチャーの、ここから地続きではなくジャンプした地平で鳴るR&B。それは「更新」と呼ぶに相応しい。今すぐダウンロードして、耳をアップデートしよう。