いまここでどこでもない

I can't give you all that you need ,but I'll give you all I can feel.

10月のレコメンドミュージック

今回からタイトルを「ベストミュージック」から「レコメンドミュージック」へと微妙に変更してお送りいたします。こちらの方がしっくりくるというだけで深い理由は特にありません。10月は何よりベストソングから。これ。断トツ。最初の一週間で100回は聴いたと思う。



気持ち悪さと多幸感。キレッキレのダンス。あくまで引用止まりのプラスティックなブラック・フィーリング。つまりは僕が岡村靖幸に求めていたもの全部をマーク外すようにサッと奪い去っていったのはまさかの清竜人(とその嫁たち)。ちなみに僕は第1夫人推しです。今月の前半はこの曲ばっかり聴いてて、そこから大好きなモータウンとかフィリーソウルに立ち戻って「もうこれだけでいいや」状態に。例えば底無しにスウィート&シルキーなこの大名曲とか。中盤の敬虔なストリングス。僕らのライフにこれ以上、他に何か必要かい?



今から四年前。「リアルタイムのポップミュージックに興味がもてない」という奇病「26歳病」にかかっていた当時22歳の僕はカニエ・ウェスト『マイ・ビューティフル・ダーク・ツイステッド・ファンタジー』という荒治療によって半ば無理矢理に現実世界へと引き戻されました。そしてリアル26歳になるやいなや、軽症とはいえ「26歳病」を再発してしまい若干戸惑っていたのですが、いつの間にか自然治癒しておりました。幸か不幸か。そう、果たして「26歳病」から治癒することは幸せなのかそれとも不幸なのか?もしかしたらその時の方がずっと音楽を素直に楽しめていたんじゃないか?そんなモヤモヤを抱えながら「26歳病」という病名の名付け親である田中宗一郎さんがポストしたこの論考を読み、その主題であるジュリアン・カサブランカス&ヴォイズの『ティラニー』を聴いて、ほんの少しだけ理解できた気がするのです。どうして「リアルタイムのポップミュージック」に猛烈に惹かれてしまうのかを。まだ何も言語化できていないのですが、ともかくジュリアンのこのアルバムは僕にとって第2の『マイ・ビューティフル・ダーク・ツイステッド・ファンタジー』とも呼べうるスペシャルな作品になりそうです。やはりレコメンドせざるを得ません。


Tyranny/Julian Casablancas & The Voidz RECOMMEND!!
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We have a remedy。あなたをリアルへと引き摺り戻す最良の処方箋を。10月のレコメンドミュージックです。どうぞ!(Arca『Xen』はまだ未聴、楽しみ)



ペーパークラフト/Ogre You Asshole

朝、寝起きボーッとした頭で聴くのには最適だ。坂本慎太郎の『ナマで踊ろう』との類似性も指摘されているように、その「らしくない」メッセージ性や怒りのこもったアイロニーは、以前の彼らが目指していた/定住していた「居心地がよくて悲惨な」場所が徐々に笑えない悲惨さに侵食されつつある事を意味しているのだろうか。冒頭「他人の夢」の目眩がするようなギターワークが本当に本当に素晴らしい。まどろみから覚醒へ。

ムダがないって素晴らしい


Run The Jewels2/Run The Jewels

通勤/通学。満員電車に乗り込む。朝帰りのビッチ、酒臭いのは我慢するから、せめて俺のブルー・スウェード・シューズは踏まないでくれ。EL-Pの暴力的なトラックとキラー・マイクのキレッキレのラップがそんな殺気立った気持ちに拍車をかけてゆく。来年四十路に突入するEL-Pがここにきてまさかのパーソナルベストを更新。ザック・デ・ラ・ロッチャの客演も素晴らしい。降りる駅はまだまだ先。クソ、とうとう踏みやがった。I'm finna bang this bitch the fuck out‼︎

Jeopardy


Never/Nohtenkigengo

Never

Never

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昼下がり。ちょっと泣いてしまいそうな青空。「悲しいほどお天気」ってこういう時に使えばいいのか。残念ながらユーミンのそのアルバムは聴いたことがないけど、僕にはNohtenkigengoの『Never』がある。トクマルシューゴトイポップと東京インディー的感性の完璧な融合。なんだかよしもとよしともの短編を思い出しちゃったりもする。「オレンジ」とかさ。余談だけど、彼が選ぶ無人島の10枚のチョイスがこれまた最高だ。信頼しかない。

Club


Reincarnation Pt.2/Dj koze

REINCARNATIONS PART 2

REINCARNATIONS PART 2

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Dj Kozeのリミックスアルバム第二弾。2009年以降のリミックスが収録されている。これを聴きながら公園で昼寝でもしたい。彼の音は真っ暗なクラブや静かなベッドルームよりも「外」がよく似合う。つくづく不思議なアーティストだと思う。初っ端からインド人による「Dj kozeっていう最高にクールなDJがいましたとさ」という怪しげなナレーション(小芝居)が配置されるなど、ユーモラスな作風は相変わらず。音ももちろん文句無し。ドリーミーかつストレンジな傑作『Amygdala』(2013)が好きな人ならマスト。

Matthew Herbert - You Saw It All (DJ Koze Mix)


Plowing Into The Field Of Love/Iceage

Plowing Into the Fields of Lov

Plowing Into the Fields of Lov

  • アーティスト:Iceage
  • Hostess Entertainmen
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風が強まり、不穏な影が伸びる夕暮れ時。ブーツが朱色に染まる。Iceageの最新作はナルシスティックでダークな気分にあまりにぴったりくるアルバムだ。相変わらずその激情っぷり(特にボーカル)にアルバムを通して聴くのは体力を要するが、不思議と何回もリピートしてしまう。きっとそれはロカビリーやトラッドの要素を取り入れることにより、激しいエモーションに土臭い生々しさが備わったおかげだろう。その胸ぐらを掴まれるような迫力は聴き手に退屈を決して許さない。

The Lord's Favorite


...And Star Power/Foxygen

Foxygen & Star Power

Foxygen & Star Power

  • アーティスト:Foxygen
  • Hostess Entertainmen
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乱痴気騒ぎや爛れた愛の夜に。きっとこのアルバムを聴いた大半の人間が「曲数を絞ったら名盤になったのに…」と思ったに違いない、SF的なコンセプトに基づいた2枚組24曲90分の超大作。まあビバリーヒルズやハリウッドのホテルでテープ録音したというエピソードからも察するように、コンセプトは後付けで片っ端から録音して全部アルバムに詰め込んだだけでしょう。そこには例えばM83『Hurry Up,We're Dreaming!』や七尾旅人『ヘヴンリィ・パンク:アダージョ』のようにとっ散らかりつつも切実な表現欲求は一切見出せず、ストーンしながら人を喰ったようなニヤニヤした笑みが透けてみえる。非常に腹立たしい。アルバムとしてはゴミだけど、それでもソフトロックやサイケデリックの最も素晴らしい瞬間だけを切り取ったような曲がチラホラあるからまたそこが憎たらしい。Pitchforkもさあ、こんな失敗作に7.0みたいな中途半端な点数やるなって。9点台か0点でいいっしょ。

How Can You Really


The New Today/2562

家に帰る。ヘトヘトだ。ベッドに横になって天井を見上げる。テレビはうるさいし、本を読む体力もない。シャワー浴びなきゃ。まだやることもある。寝るわけにはいかない。何か音楽をかけよう。うるさくなくて、それでいて刺激的なやつを。アンビエントもいいけど、ビートもほしいな。ゴルいやつ。低音も必要だ。宇宙的でスピリチュアルなダブとかいいね。そうだ2562のアルバムを聴こう。「Cosmic Bounce」。完璧だ。

Cosmic Bounce


Theatrics/Puzzle Muteson

THEATRICS

THEATRICS

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イングランドのワイト島出身の男性SSW、Puzzle Mutesonのこの作品は真夜中に聴くべきだ。それも部屋を灯りを消して、真っ暗なベッドルームでひとりで聴かなければならない。そうでなければこのアルバムに漂う親密なアンビエンスはあっという間に霧消してしまうだろう。未成熟な子供が故の繊細さではなく、成熟した大人が密かに抱え持つ根源的な脆さを指して「フラジャイル」と呼ぶのならば、此れ程フラジャイルな音楽はない。

In Circles


Bestial Burden/Pharmakon

Bestial Burden

Bestial Burden

  • アーティスト:Pharmakon
  • Hostess Entertainmen
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深夜4時。冷たいシーツにくるまって君はPharmakonを聴いている。彼女の絶叫が家族にばれないようにとても小さな音量で。するとノイズは繭となり叫びや息遣いはまるで喘ぎ声のような官能性を帯びる。2人だけのコクーンの中で、彼女からは獣の匂いがする。

Intent or Instinct


Ruins/Grouper

Ruins

Ruins

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朝焼け前の、いちばん寒い時間。

Holding


Funeral Kid EP/Flower Face

お葬式の朝。昨日までいた人が、今日はいない。いったいどこにいったんだろう。涙はでないけれど、胸がチクリと痛い。だから私は歌を歌おう。いなくなった誰かのためじゃなくて、私のために。私は歌を歌おう。


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