いまここでどこでもない

I can't give you all that you need ,but I'll give you all I can feel.

Best 50 Albums of 2015 (25→?)

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25. Archy Marshall『A New Place 2 Drown』

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Archy Marshall君がZoo Kid時代に自身のBandcampのページに「Bluewave」とタグ付けしていたことを覚えているだろうか?様々な名義で作品をリリースしている彼だが、「Bluewave」はそれら全てに共通するキーワードといえるのではないだろうか。勿論、本名名義でドロップされたこのアルバムも例外ではない。「Blue」が意味するのはジャズやブルースといった黒人音楽を意識したものであると同時に、それはやはり思春期的な憂鬱と感傷、つまりは「ブルーにこんがらがっている」の青でもある。『A New Place 2 Drown』のサウンドはDOPEで沈んでいく感覚と並んで、ヒリヒリとした切迫感も強く感じさせる。ヒップホップ、ポスト・ダブステップ、ベース・ミュージック。貪欲に先端的な音楽を取り入れて彼はブルーを、10代の虚無を、初期衝動を鳴らしてみせる。その素晴らしい表現にロックの要素はほぼ皆無だ。前作『6 FEET BENEATH THE MOON』にはまだロックと思しき音が鳴っていて、高い月へとその手を伸ばしていた。しかし彼はそんな甘ったれたロマンチシズムをかなぐり捨て、暗い湖面に映る月の影へと飛び込んだ。そしてそのダイブは見事に成功した。

「Swell」


24. (((さらうんど)))『See You, Blue』

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2013年の『New Age』は本当によく聴いたし、今年の夏もヘビーローテーションしたけれど、鴨田潤のボーカルには今だに違和感を覚えてしまう。それが逆に味を出しているとも言えるが、キラッキラと乱反射する高性能サウンドに土臭く生活臭のする彼の声はやっぱりアンマッチだしかなりミスマッチだ。ボーカルを変えてしまえば魔法のようなポップネスはきっと失われてしまうのだろうけど…。そんなモヤモヤした気持ちを『See You, Blue』では一切感じずに済む。音とボーカルがマッチしていて非常にストレスフリーだ。ストーリーテリングも冴えている。まずは「Time Capsule」を聴いてくれ。SF的な尖った世界観をサウンドで表現しつつ普遍的なジュブナイル文学のような詩作!少年時代に別れを告げる切なさに満ちた鴨田の歌唱もバッチリだ。アルバムに通底するフィーリングは「またね、ブルー」というタイトルに集約されるだろう、どの曲も少し背伸びをして大人になる痛みを受け入れ甘くてほろ苦い。ああ、文句無しに素晴らしい作品だ。そう、素晴らしい作品だけども、ほんのちょっぴり『New Age』のちぐはぐな乖離が懐かしくもある。ブルーとしっかりと手を取り合っていたあの頃。ないものねだりのアイウォンチューとは思いつつも、やっぱりいつだってモヤモヤとしてしまう罪深いグループ(((さらうんど)))。最高っす。

「Siren Syrup」


23. Floating Points『Elaenia』

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サム・シェパードという名前を初めて知ったのは2011年のことだった。各メディアで「Shadows」が絶賛されていたが、近場で12インチが手に入りそうになかったのでYouTube「Marilyn」を聴いた。洗練されたジャジーサウンドにすっかり魅了され、毎晩この曲を流しながら眠りについた。ジャズに宿るコズミック・フィーリングを抽出したような感覚は、待望の初フルレングスアルバムである『Elaenia』でも存分に味わえる。男の子が好きそうな音楽だなー、と個人的には思う。女の子はやっぱりジェイミーXXみたいなロマンチックなのが好きでしょ。フローティング・ポインツのロマンチシズムとは恋愛や性愛よりもメカに対するフェチや宇宙の謎への憧れに近いものがある。感情よりも理性に訴えかけてくる。あるべきものが、あるべき場所に収まってゆく快感。そのクールネスがもたらすのは情動を伴わない、まるで麻痺のような感動だ。

「Silhouettes」


22. 星野源『Yellow Dancer』

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恥ずかしながら僕が星野源の魅力に心の底から気付かされたのは2015年末の紅白歌合戦のステージだった。多幸感とブラック(イエロー)・フィーリング。日本のド真ん中で黒人音楽を解釈してお茶の間に届けるという勇敢な行為に僕は震え、そこにやはり小沢健二の姿を重ねた。非常にウェルメイドな作品である『Yellow Dancer』に(90年代の小沢健二の諸作のような)破綻や狂気や絶望を見出すのは確かに難しいが、しかし、その澱みのなさこそが強みとなっている。だって星野源は現在34歳、要は小沢健二が『eclectic』をリリースした年齢だ。そりゃ大人にもなって、危うさも薄れる。星野源が王子様期の小沢をどこまで意識したかは分からないが、スウィート・ソウル・ミュージックとしての完成度では勝るとも劣らない出来栄えなのは間違いない。小沢健二のナイーブな歌声とは異なり、何気にどっしりと太い彼の声に90年代から10年代の間に失われたもの/獲得したものが克明に記録されているようで、思わずドキドキしたり涙を流したりしてしまった。1994年に『ライフ』を聴くように、僕は2015年に『Yellow Dancer』を聴いた。聴きながら誰かの待つ歩道を歩いていた。

「Snow Men」


21. Oneohtrix Point Never『Garden of Delete』

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かっこいいけど要はナイン・インチ・ネイルズだよなー、というのがこのアルバムの第一印象だった。とにかくビートが硬く、ロック的なダイナミックな動きをみせる楽曲が多くを占める。だがじっくりと聴き込んでゆけば、彼が自称する「ハイパーグランジ/サイバーメタル」の名に相応しい完全にネクストレベルの音像であると思い知らされる。10年代を代表する大傑作である前作『R Plus Seven』のゾクゾクする音色の妖しい色気に比べると些か小便臭い気もしなくはないが、やはりこれも文句無しの傑作だ。「Sticky Drama」にサンプリングされた切り刻まれたボーカルと暴力的なノイズのキャッチーさには思わずゲラゲラと笑ってしまう、凄まじい音楽体験。悪趣味で倒錯的でありながらサービス精神も旺盛で、『Richard D James Album』をリリースした頃のエイフェックス・ツインの存在感ってこんな感じだったのかも。

「Sticky Drama」


20. Dj Koze『DJ-Kicks』

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「DJ-Kicksシリーズの最高傑作はErlend Øyeである」というタトゥーを(心に)彫っている僕だが、どうやら「DJ-Kicksシリーズの最高傑作はErlend ØyeとDJ Kozeである」と訂正せねばならないようだ。所謂DJ Mixとして聴くと肩透かしをくらうかもしれない。繋ぎはフェードイン/アウトが大半だし、テクノというよりもヒップホップのビートアルバムを聴いている感覚に近い。何ならKozeが選曲したストレンジ・ポップを詰め込んだコンピレーション・アルバムとして聴いてもあまり問題はないだろう。が、夢見心地で無邪気なエスケーピズムと音楽への深い愛情を堪能するにはやっぱり最初から聴かなきゃわからない、はず。ボーッと本を読んだり掃除をしたりしながら聞いてみて、きっとこそばゆくなるような楽しさがあなたを取り囲む。

Homeboy Sandman「Holiday (Kosi Fink's Edit)」


19. トロールズ『Renaissance』

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適当な格好をしていてもお洒落な人っている。裏では血が滲むような努力をしているのかもしれないが、肩の力が抜けていてセクシーな人。羨ましい。だから僕はペトロールズを率いる長岡亮介(a.k.a 浮雲)に猛烈に嫉妬する。僕だってかなりのくせっ毛なのに、あんな風に髪型をセットできた試しがない。ペトロールズの音楽もそうだ。結成10年にしての初フルレングス・アルバムなのに、いい感じにユルくて色っぽい。そのアウラだけじゃなく、確かな演奏技術に支えられた楽曲のポップソングとしての強度にも舌を巻く。「チャラい山下達郎」とでも表現すれば興味をもってくれるだろうか。かっこいい人達がかっこいい音楽をかっこよく演奏している、まるで全くかっこつけていないように。かっこつけんじゃねーよ!と思いつつもそれ以上のかっこよさってない。神様、生まれ変わったらペトロールズに入りたいです。今度もかなりのくせっ毛でいいから。

「Profile」


17. Alex G『Beach Music』

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2曲目「Bug」のラスト十数秒、ボーカルのピッチがいじられてロボ声のように加工される時間。何度聴いてもその箇所で涙がこぼれそうになるのだけど、僕はその時の感情の正体を自分自身でも未だに説明できずにいる。そしてアルバム全編を通じて僕は類似の「感動」(とりあえずメタ的にこう名付ける)を味わうことになる。チルウェーブを通過したSSW、と紋切り型にアレックスGを紹介するのは容易いが彼の音楽がオファーする体験を説明するのはとても困難だ。僕は昨年、ある夏の日にこのアルバムを流しながら知らない街をドライブした。初めて走る道と初めて映る景色に誰しも感じるだろうとても幽かな不安を音楽が加速させてゆく。「僕はどこにいるのだろう?」という『ノルウェイの森』のラストシーンの台詞を反芻しながらハンドルを強く握りしめた。あの車内を思い出してみても「Bug」の涙の理由はやっぱり分からないけれど、それは不安や切断の感覚ととても近い場所から生じているような、そんな予感がしている。



15. Baby Jesus『Baby Jesus』

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世界中で『マッドマックス』旋風が吹き荒れた2015年、そんな一年に最もマッドマックス的だったバンドを挙げるなら間違いなくスウェーデンの5人組Baby Jesusの名を叫ばなければならない。まずは頭を空っぽにして最大音量にして「Deep Blue Delay」のビデオを観てみてくれ!アンオフィシャルとか気にしないでいいし、iPhoneのスピーカーで一向に構わない。どうだ?頭悪そうだろう?でも最高じゃない?暴力的だけど薄っすらと詩情と知性が滲み出てる気がしないかい?マッドマックスみたいに。まぁ僕は実はまだマッドマックス童貞なんで分かんないです。そういえばコイツラを僕に紹介してくれた友人は「イギーポップが裸のラリーズをバックに歌ってるみたいなバンド」とレコメンドしてくれたのだけど、僕は「村八分ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの2枚目に影響を受けて作った幻のオリジナル・アルバム」とでもこの作品を褒め称えたい。テンプルズに勝てる若手バンドはもう彼らしかいないって本気で思うよ。

Bandcamp


14. Destroyer『Poison Season』

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デヴィッド・ボウイブルース・スプリングスティーンへのオマージュ「Dream Lover」と、まるでディランの名曲をAOR/チェンバー・ロック調にアレンジしたような「Times Square」。素晴らしいアルバムの中でもずば抜けてこの2曲が素晴らしい。ちゃんと歌詞を読んでみたいと思いつつ、いつも繊細なアレンジと甘いメロディーに心奪われて結局この作品の主題が掴めないでいる。監督を務めたデヴィッド・ギャロウェイが語るには「Girl in a Sling」のビデオの荒涼とした世界観がアルバムを象徴しているそうだが、先に挙げた2曲が放つ陽性のヴァイブの方が圧倒的に印象に残る。デストロイヤーことダン・ベジャには「現代の吟遊詩人」なんて手垢だらけの肩書きが良くお似合いだ。彼は優しい歌を唄い、アイロニカルな詩を紡ぎがら、毒の季節に突入してゆく下界を眺めている。摩天楼からずっと。見張り塔からずっと。

「Times Square」


13. Dilly Dally『Sore』

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人は誰しも十代でロック・バンドに夢中になる。ギターも弾けないくせにバンドを組んでステージの上で眩いライトと歓声を浴びる妄想をしたことのない男子なんていないはずだ。トーストとピーナッツバターぐらいに思春期とバンドの相性は抜群にいい。そして大人になるにつれてスーパーでSkippyを買わなくなり、練習したギターも売払って「ロックは死んだ」なんて訳知り顔で笑いながら、ヒップホップやインディーポップに夢中になっている。十代ほど愚かで絶望的で、子供じみた時代はない。君も僕もすっかり立派な大人になって想像よりもずっとうまくやっている。たまにピート・ドハーティのゴシップをネットで見かけては相変わらずだなんて安心しながら、もちろん聡明な君はドラッグや暴力とは無縁の生活を送っている。僕もそうだ。ケイティ・モンクスとリズ・バールという2人の女の子が中心となって結成されたディリー・ダリーはカナダを拠点にするロック・バンドで、この『Sore』がデビュー作となっている。ルーツに微笑ましいほど忠実で、彼女達が愛して夢中になってきたバンドを当てるのは容易い。ピクシーズダイナソーJR、ニルヴァーナといった懐かしきオルタナ勢やリバティーンズ、ヤーヤーヤーズといった21世紀のロック・スターへの憧れ。でも、それだけなら僕はこんなにも彼女達に心を揺さぶられることはなかっただろう。「”痛み”なんてどう?最近どう?」と歌ったのはキレッキレの頃の中村一義で、傷/爛れ/腫れ物を意味する「Sore」なんてアルバムに名付けるディリー・ダリーは同じ事をもっとダイレクトに僕に問いかける。「Purple Rage」のビデオに登場する紫色のフリークスは惨めで醜いクリープだった頃の記憶を思い出させるし、「Green」の「十代のためのアンセムを書きたいの/リバティーンズみたいに」なんて歌詞には涙腺が刺激されてしまう。痛たたた。君は彼女達を笑うだろうか?それとも甘い感傷とともに若い日々をうらやましく思うのだろうか?とりあえず「Desire」を再生してみればいい。「1,2,3,4」というカウントと共に歪んだギターが鳴らされる瞬間に14歳の君が君へと唾を吐きかけるだろう。豚。檻の中の豚。抗生物質漬けの豚。やめろよ、痛いってば。







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