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いまここでどこでもない

I can't give you all that you need ,but I'll give you all I can feel.

最近のお気に入り

最近気に入ってる新譜と旧譜を何枚か。兼忘備録として。こういうのも書いておかないと、あっという間に忘れてしまう。飽きっぽいからね。

Minus Tide/Lemonade(2014)
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前作『Diver』で一躍人気に火がついたシンセ・ポップバンドの2年ぶりのサードアルバム。「チルウェイバーなブルーアイドソウル」という路線から大きな変更は特に無いが、前作に比べるとメロディーよりもトラックに比重が置かれ、更にチルアウトしている印象を受ける。アンビエンスの素晴らしさは勿論、丸みを帯びた低音をはじめとした音の気持ち良さは特筆すべき事項。大音量で聴けばジャケット通りに、まさに水の中にいるような透明で柔らかに包み込まれる快楽的なサウンドスケープが展開されている。

勿論M3「Clearest」のような「Softkiss」並に殺傷力のあるキラーチューンも違和感なく配置されており、アルバム通じての完成度や統一感も圧倒的に今作に軍配が上がる。夏の終わりのセンチメントを加速させること間違いなしの、ロマンティックな名盤。



Neuma/YankaNoi(2014)
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トクマルシューゴと、彼が率いるトクマルシューゴバンドでマルチプレイヤーとして活躍するユミコが中心となり結成されたバンドのデビューアルバム。このプロジェクトではトクマルさんは演奏に徹し、ボーカルは全てユミコさんが務めている。

メンバーの世界中を旅した経験がインスピレーションとなった、物悲しくも開放的な異国情緒溢れるチェンバーポップ。ヤンカノイと最も近い事をしているのは、例えばベイルートだろうか。知らない町の知らない路地から流れてくる、聞いたことのない素敵な音楽。ホームを失った根無し草な感覚とぼろぼろの自由。こういうの、完全にツボなんです。まいった。

全曲が掛け値なしに素晴らしいが、あえてベストトラックを選ぶとしたら5曲目の「ひこうき雲」を挙げたい。イノセントなボーカルと勇壮な演奏が、全てのバガボンド達の足元を小さく灯している。頼りなくも、確かな光で。

なにもないような世界だ
とてもとても静かで
長くのびたひこうき雲が透明に溶けてく

(ひこうき雲)


ソングライン/羅針盤(2000)
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羅針盤のアルバムは、特にリトルモア移籍以前の初期三部作(『らご』『せいか』『ソングライン』)はどれも傑作だが、もし一枚だけ選べといわれたら迷わず僕はこの『ソングライン』と答える。このアルバムに通底する浄化されるようなホーリーな悲しみが刻まれたレコードを、他には七尾旅人の『ヘヴンリィ・パンク:アダージョ』以外に僕は知らない。荒井由美の「悲しいほどお天気」というフレーズに何かしら感じる人なら、今すぐにこのCDを購入すべきだ。

「たしかに雨の匂いがする/不思議な晴れの日」とは前作『せいか』の歌詞からの引用だが、このリリックほど的確に『ソングライン』の奇妙な悲しみを表現した言葉もないだろう。 悲しいはずなのに笑顔が零れ、嬉しいはずなのに涙が零れる予感がする。そんな複雑さをそのまま音にした山本精一のギターの表現力に思わず舌を巻く。

「がれきの空」の世界が崩れ落ちるようなイントロから始まり、弛緩することなくクロージングトラックの「羅針盤」まで進んでゆく。麗しきSNOOZER誌の「日本のロック/ポップアルバム150枚」は素晴らしい企画だったが、その最大最悪の失敗はこのアルバムを1位にするどころか、リストにすら入れなかった事だ。多作で知られる山本精一ワークスの中でも屈指の傑作であり、この国の「うたもの」の最高到達点。

もしも せかいが もうひとつ あれば
ひとつが おわり ひとつが はじまる
そして ひとりは ふたり ふたりは ひとりで
おたがいの 空を 見つめ合う

(がれきの空)

何も欲しいものがない
何も捨てるものがない
誰か目の前で今
笑ってる

(しずかな場所)

存在のすべてを かけて 泳いでも
荒れ果てた 海から どこへもゆけない

(波)

笑い声が いつも側にあった
なつかしい君の 過去から
きこえてくる ハナウタのような
人の中の とても小さな未来

(ソングライン)