いまここでどこでもない

I can't give you all that you need ,but I'll give you all I can feel.

レビュー

The 1975『I Like It When You Sleep, for You Are So Beautiful Yet So Unaware of It』

デビューアルバム『The 1975』はモノトーンな美意識が、少なくともビジュアルイメージに関しては、貫かれていたが、最新作においてカラフルな装いに転向しても彼らの最大の魅力は少しも損なわれていない。甘さ。チョコレート、それもブラックではなくホワイ…

Kanye West『The Life of Pablo』

一体何故、こんなことになってしまったのだろう。オフィシャル・サイトで公開されたクレジットに記載されている参加ゲストの面子の豪華さにクラクラしながらこの作品を聴いていると、カニエ・ウェストというミュージシャンのエゴは本当に本当に本当に厄介な…

Grimes『Art Angels』

Pitchforkが近日中にアップするだろう『Art Angels』についてのレビューが、良くも悪くもこの作品に対するリアルタイムでの評価の尺度となるのはまず間違いないだろう。だからこそ、なんて言い方はあまりにPitchforkを神格化しすぎな気もするが、それまでに…

The World Is a Beautiful Place & I Am No Longer Afraid to Die 『Harmlessness 』

The World Is a Beautiful Place & I Am No Longer Afraid to Die 。「この世界は美しく、僕はもう死ぬのは怖くない」という「世界の終わり」と名乗っていた頃のセカオワすらドン引く程のナイーブさを臆面もなく露わにしたそのバンド名。2009年にアメリカの…

Ducktails『St. Catherine』

麗しき新世代ギターロック・バンドの雄リアル・エステート、そのギタリストであるマット・モンダリルが率いるダックテイルズ。ソロプロジェクトといっても結成は2006年と、2009年に始動したリアル・エステートよりも歴史は古く、寧ろ彼にとってはホームとも…

Tame Impala『Currents』

奇妙な作品だ。少なくともテーム・インパラのパブリック・イメージであるサイケ・ロック/ギター・ロックの範疇からは大きく逸脱したアルバムだ。昨年リリースされたハウ・トゥ・ドレス『What Is This Heart ?』を連想させる、ソウル・ミュージックへの接近。…

cero 『Obscure Ride』(Raw)

『Obscure Ride』のサウンドへの言及に比較して、その作中で語られた事象についての言及は現時点では驚くほど少ない。そこで、このディティール編では今作で多用される【船】と【影】というモチーフと【砂漠】/【海】(と「都市」)という舞台が何を意味するの…

cero『Obscure Ride』(Rough)

予めメモしたアルバム発売日にタワーレコードへと足を運び、初回限定版がまだ残っていることに心から安堵してレジに向かい、帰り道にどうしても気になって歌詞カードを取り出し、部屋に戻ると急かされるようにCDをセットし、ほんのちょっとの不安を抱えなが…

Grouper『Ruins』

Grouperの最新作『Ruins』がリリースされた。Ruins/Grouper 2014 まずはざっと彼女の歩みを振り返りたい。GrouperことLiz Harrisは1981年に米ポートランドで産まれた。2005年からインディペンデントに何枚かのCD-R作品をリリースし、2008年の『Dragging a De…

Giant Claw『Dark Web』

食品まつりの作品などのリリースで知られるレーベル「Orange Milk」の主催者、Keith Rankin a.k.a Giant Clawの『Dark Web』がとんでもない! DARK WEB by Giant ClawFKA twigsの『LP1』が良い意味でも悪い意味でも「置きにいった」ウェルメイドなR&Bアルバ…

KOHH『Monochrome』

こんな言葉がある。 リアルよりリアリティ、リアル これは甲本ヒロトがハイロウズ時代に書いた「十四才」という曲の一節だ。 KOHHというラッパーがいる。1990年東京生まれ。幼少期は都営住宅で薬物中毒者の母親と過ごす。身体中タトゥーだらけ。2012年に発表…

最近のお気に入り

最近聴いた音源から。新譜みっつ、旧譜ひとつ。Weaving/Jo Johnson(2014) アメリカのエレクトロニックミュージシャンのニューアルバム。美麗なシンセサウンドと反復の快楽。基本的にクラウトロックを意識した意匠ながら、随所にドローンやアンビエントの要素…

SEEKAE『WORRY』

薄々勘付いているだろうが、ポップ・ミュージック好きの連中の「最高!」だとか「歴史的名盤!」みたいな言葉ほど信用できない言葉、そうそうない。彼らは年中そんなことを声高に叫んでは、翌週にはけろっとデータを消去し違うアーティストの最新作に尻軽に…

Merchandise『After The End』

ここ十年で最もアメリカの文学に影響を与えたバンドはキュアーとR.E.M、そしてスミスだそうだ。その影響力は純文学に限定せず、ヤング・アダルト文学や映画、果てはカルチャー雑誌やティーン雑誌の広告の見出しまでスミスの歌詞が引用されまくっているようだ…

Spoon 『They Want My Soul』

Spoonのニューアルバムが大変なことになっている。前作の『Tranceference』はもちろん、最高傑作と名高い前々作『Ga Ga Ga Ga Ga』すら凌駕する傑作だなんて想像できるかい?凌駕する、ってのはちょっと言い過ぎにしても、彼らの輝かしいディスコグラフィ内…

お知らせ、7月のベストミュージック(後編)

ではでは7月のベストアルバムを!順不同で10枚。いや、でも正直最初の2枚は飛び抜けてとんでもなかった。勿論どれも本当に本当に素晴らしい作品ばっかりです。8月にはとりあえずFKA twigsとSpoonの新譜もあるし、アナウンスされていたKanye Westの新曲「Al…

お知らせ、7月のベストミュージック(前編)

こんにちは。すっかり夏ですね。先月のこの記事も似たような出だしだった気もしますが、ずっと夏なんだから仕方ない。だってほら、ヒロトもハイロウズの時に歌ってたじゃん、「6月と9月にはさまれたのが夏じゃない」「すべての季節が過ぎ去っても/僕は夏のま…

Undersky Ambience

Streaming 以前にもポストした国産エレクトロニカの最高峰、sora。まるでオウテカがサンプラーを用いてリゾートミュージックを制作したかのような『re:sort』という傑作を1枚だけ残して活動休止(?)して以来、何の音沙汰も無いので彼の新しい音源を聴くこと…

Lowlakes 『Iceberg Nerves』

インターネットを徘徊して片っ端から音源をダウンロードして聴いては保存/削除し、時間を浪費しまくる、という幸福なのか不幸なのかよく分からないけど、とにかくネット時代の音楽好きあるあるなことをしていたら発見しちゃったよすげーバンド!なんて経験誰…

Bleachers 『Strange Desire』

We Are Young/Fun. 2012 アメリカならともかく、この日本でFun.というバンドを覚えている人ってどれくらいいるんだろう。もしかしたら僕が知らないだけで今でも熱心に愛されているのかもしれないけど、とにかく僕は完全に失念していた。ジャネール・モアイを…

Mark Barrott『Sketches from an Island』

Mark Barrottのこのアルバム、とにかくとにかく兎に角、素晴らしいんです。バレアリックの新たな名盤の誕生です。Sketches from an Island/Mark Barrott 2014 イングランド出身のMark Barrottがイビザ島に移住し、届けてくれた『島からのスケッチ』。そのタ…

A Sunny Day in Glasgow 『Sea in Absent』

シューゲイザーの聖地フィラデルフィアで曇り空が似合う耽美的なフィードバックノイズを鳴らしていた、双子姉妹(脱退?)+お兄ちゃん+その友達からなるA Sunny Day in Glasgow。そんな海へ行くつもりじゃなかった彼らが、なぜかオーストラリアはシドニーに…

The Brazil Connection/音街巡旅

このアルバムめちゃくちゃ面白い&いいです。Studio Rio Presents:Brazil Connection 2014ありがちなソウルの名曲のブラジリアンカバー集かと思いきや、なんと原曲のボーカルをそのまま流用し、マルコス・ヴァーリーをはじめとしたブラジルの凄腕ミュージシャ…

Lust for Youth

AMPのこの記事を読んでからというもの、早く6月10日がこないかと首を長くして待っていた甲斐がありました。スウェーデン出身のLust for Youth、彼らの4枚目のフルアルバム『International』が最高なんです。前作までのダークでゴシックな作風からThe Horrors…

ナマで踊ろう

らしくないな。それが坂本慎太郎の『ナマで踊ろう』を聴き終えての感想だった。僕はゆらゆら帝国の熱心なファンであったとは言えないけれど、彼らの音楽は常に「ここではないどこか」に連れてゆく、アナーキーでロマンチックな音楽だったと記憶している。社…

TV Girl

アメリカはサンディエゴを拠点に活動する男女2人組ローファイ・ポップ・グループであるTV Girl。彼らの詳細なディスコグラフィーや経歴は素晴らしくまとまったこのブログ記事などを参考にしてほしい。なかなか癖のある一筋縄ではいかないバンドだとわかるは…

Fatima,篠原ともえ

ロンドンを本拠地に置くEglo recordsというレーベルをご存知だろうか?レーベルの主催者の1人はサム・シェパードという人物。この名前にピンとくる人は少ないかもしれないが、Floating pointsの中の人といえばテクノリスナーなら聞き覚えがあるだろう。 Floa…

神聖かまってちゃん

神聖かまってちゃんを初めて見たのはNHKのMusic Japanという歌番組だった。タイマーズ時代の忌野清志郎を思わせるの子の風貌、トラッシュなギター、君と僕と音楽しか存在しない歌詞。サウンドとしては何ら新しいものはない。my bloody valentineとPixiesいう…

Quirke,dj wwww

Quirkeがヤバイ。とにかくヤバイんだ。まず強烈なインパクトを残すこのジャケット、ヤバすぎる。ACID BETH (ep)/Quirke 2014 彼の経歴を調べてみたらQuirkeことイギリス人のJosh Sixtyは普段は大工として働いているらしく、その合間をぬってせっせと制作した…

may.e

REMINDER/may.e 2014 REMINDER by may.eまずは何を差し置いてもこの素晴らしいギターの響きについて書かなければならない。彼女の奏でるギターを聴くためにだけでも、今すぐこの作品をダウンロードすべきだ。(なんとname your price!)1曲目の「HOURS」に…